はじめに
知らない会社から突然メールが届いた時、どうしていますか?
以前なら会社名を自分で検索して確認していた場面でも、最近はAIにメールを見せて、
このメール、問題なさそう?
と確認する人もいると思います。
検索機能を使えるAIなら、インターネット上の会社情報まで調べてもらえる場合があるのは便利ですよね。
しかし、AIから、
会社のホームページが確認できました。
評価も高く、大きな問題はなさそうです。
と回答されたとしても、そのメールが安全だと証明されたわけではありません。
現在は、偽の会社サイト・会社の経歴・商品情報・高評価レビュー・利用者の声などをまとめて用意し、本物の事業者のように見せる詐欺も報告されています。Microsoftは、AIで作られた商品説明や画像、偽の事業沿革、顧客レビューまで備えた詐欺サイトが作られていると注意を呼びかけています。
この記事では、AIが「問題なさそう」と答えても安全とは限らない理由と、心当たりのないメールが届いた時の対応を初心者向けに解説します。
📌 本記事は2026年8月時点の情報をもとに作成しています。詐欺メールや偽サイトの手口は変化するため、最新情報はIPAやフィッシング対策協議会などの公式情報もご確認ください。
この記事でわかること
- AIの「問題なさそう」を信じ切ってはいけない理由
- 偽の会社サイトや高評価レビューを使った手口
- 会社が実在してもメールが本物とは限らない理由
- 心当たりのないメールが届いた時の対応
- 怪しいメールをAIへ確認してもらう時の使い方
まず結論:AIの回答は安全証明ではない

怪しいメールをAIへ確認してもらうこと自体が、すべて悪いわけではありません。
メールの不自然な部分を整理したり、追加で確認するべき点を挙げてもらったりする使い方は便利です。
ただし、最初に覚えておきたいのは次の点です。
AIの「問題なさそうです」は、そのメールが安全だと証明する回答ではありません。
生成AIは、与えられたメールの内容や、検索で見つけた公開情報をもとに回答します。
そのため、検索で見つかった会社サイト・口コミ・紹介記事などがすべて偽物だった場合、AIが誤った情報を安心材料として使ってしまう可能性があります。
OpenAIは、ChatGPTが誤った内容や誤解を招く内容を、自信があるように回答する場合があると説明しています。Googleも、Geminiが不正確な情報を事実のように提示する可能性があるため、回答を再確認するよう案内しています。
「サナカンパニー」からメールが届いたら?

ここからは、架空の会社である「サナカンパニー」を例に考えてみましょう。
ある日、利用者のもとへ、サナカンパニーを名乗る会社から次のメールが届きました。
お取引についてご連絡しました。
詳細は添付資料をご確認ください。
利用者には、サナカンパニーという会社に心当たりがありません。
そこでAIへ、
サナカンパニーから届いたこのメールは問題なさそうですか?
と確認しました。
AIがメールの文章や会社名を調べると、次の情報が見つかりました。
- サナカンパニーの公式らしいホームページがある
- 会社概要や事業内容が詳しく書かれている
- 利用者からの評価が高い
- 良い口コミや体験談が多数掲載されている
- 悪い評判がほとんど見つからない
するとAIは、
実在する会社で、評判も比較的良いため、大きな問題はなさそうです。
と回答するかもしれません。
しかし、実際には会社サイト・会社の経歴・口コミ・紹介ページまで、詐欺の信用づくりのために用意されたものだった、という可能性があります。
Microsoftは、詐欺師がAIなどを使い、偽の店舗サイトやブランド、事業沿革、商品説明、顧客レビューを短時間で作り、本物の事業者のように見せる手口を報告しています。
AIが「問題なさそう」と判断してしまう理由

AIが検索できる場合でも、会社の安全性を公的に認証しているわけではありません。
主に、メールに書かれている情報や、インターネット上で見つかった情報を整理して回答しています。
そのため、次のような問題があります。
検索結果に表示された情報が正しいとは限らない
会社サイトが検索結果に出てきても、そのサイトを運営している人が本当にその会社の関係者なのかは、検索結果だけでは分からない場合があります。
検索で見つかることと、会社の実態が確認できることは別です。
高評価レビューが本物とは限らない
レビューには、偽物・報酬と引き換えに投稿されたもの・評価を操作したものなどが含まれる場合があります。
FTCも、見た目だけで本物のレビューと偽物を区別するのは非常に難しい場合があり、複数の情報源を確認するよう案内しています。
情報同士に矛盾がなくても、全部が偽物の場合がある
会社サイトに書かれた沿革と、紹介記事やレビューの内容が一致していれば、信頼できそうに見えます。
しかし、同じ人物やグループが一式すべてを作っていれば、情報同士が一致していても安全とは限りません。
これは、詐欺師が用意した偽サイトや偽レビューの存在と、生成AIが誤った回答をする可能性を組み合わせて考えた注意点です。AIが検索結果を引用していても、引用元そのものが正しいかは別に確認する必要があります。
実在する会社でも、そのメールが本物とは限らない
会社が本当に存在していたとしても、届いたメールがその会社から送られたものとは限りません。
第三者が実在する会社名・代表者名・ロゴなどを無断で使用し、その会社になりすましてメールを送る場合もあります。
IPAは2026年3月、実在する社長名や会社名をかたる詐欺メールの相談が急増したとして注意を呼びかけました。確認する場合は、届いたメールへ返信せず、電話など別の方法を使うよう案内しています。
つまり、AIが、
サナカンパニーという会社は実在します。
と確認できたとしても、
このメールは本物のサナカンパニーから送られています。
という証明にはなりません。
次の3つは、分けて考える必要があります。
- その会社が実在するか
- インターネット上の評判が良いか
- 届いたメールが本当にその会社から送られたか
心当たりのないメールでは3つの操作をしない

心当たりのない会社や人物からメールが届いた場合は、安全を確認できるまで次の操作をしないようにしましょう。
返信しない
返信すると、自分が実際に使用しているメールアドレスだと相手へ伝わる可能性があります。
また、返信後のやり取りで信頼させ、お金・個人情報・アカウント情報などを要求される場合もあります。
確認が必要な場合も、届いたメールへ直接返信せず、別の連絡先を使いましょう。
メール内のリンクを押さない
リンク先がきれいなサイトでも、ログイン情報やカード情報を盗むために作られた偽サイトかもしれません。
フィッシング対策協議会は、正規メールと確認できないメールのリンクへ安易にアクセスせず、普段から使っているブックマークや公式アプリから確認するよう案内しています。
添付ファイルを開かない
添付ファイルには、不正なプログラムや、危険な操作を促す文書が含まれている可能性があります。
送信者が知っている相手に見える場合でも、心当たりがなければ開かないことが大切です。IPAも、見知った相手からのメールに見える場合であっても、身に覚えがなければ添付ファイルや本文内のURLを開かないよう案内しています。
知らないところから届いたメールは、安全を確認するまで返信しない・リンクを押さない・添付ファイルを開かない。
まずはこの3つを覚えておきましょう。
確認する時はメールとは別の入口を使う

メールの内容が本物か確認する必要がある場合は、メール内に書かれた情報だけを使わないようにします。
例えば、次のような方法があります。
- 以前から利用している公式アプリを開く
- 自分で登録したブックマークから公式サイトを開く
- 契約書や名刺に書かれた電話番号を使う
- 過去に正しくやり取りした連絡先へ確認する
- 会社では情報システム部門やセキュリティ担当へ相談する
届いたメールに書かれている電話番号や問い合わせ先も、攻撃者が用意したものかもしれません。
IPAも、送信元とされる人物へ確認する場合は、メールへ返信せず、電話など別の方法を使うよう案内しています。
AIへ聞くなら「安全ですか?」と丸投げしない

怪しいメールをAIへ確認してもらう時は、
このメールは安全ですか?
と、最終判断を丸投げしない方が安全です。
代わりに、次のように聞いてみましょう。
以下は、心当たりのない送信者から届いたメールの内容です。
このメールが安全だとは断定せず、
・不審に見える部分
・不足している確認情報
・追加で確認するべきこと
・返信、リンク、添付ファイルを操作する前の注意点
を整理してください。
検索で会社サイトや口コミが見つかっても、
それだけを安全の根拠にはしないでください。
この聞き方なら、AIへ安全性の最終判断を任せるのではなく、自分が確認するための材料を整理してもらう使い方になります。
ただし、メール本文をAIへ入力する時は、氏名・メールアドレス・会社の内部情報・顧客情報・注文番号などを、そのまま貼らないよう注意してください。
関連記事
怪しいメールをAIへ確認してもらう場合も、個人情報・メールアドレス・社内情報をそのまま入力しないように注意しましょう。

AIに任せられること・任せてはいけないこと
AIへメールを確認してもらう場合は、役割を分けて考えると分かりやすいです。
AIに任せられること
- 不自然な文章を探す
- 急がせる表現を探す
- お金や情報を要求している箇所を整理する
- 追加で確認するべき項目を挙げる
- 判断できない部分を整理する
AIだけに任せてはいけないこと
- メールが本物かどうかの最終判断
- 会社の実態が本物かどうかの証明
- 送信者が本当に会社の関係者かどうかの証明
- リンクや添付ファイルを開いてよいかの最終判断
- お金や個人情報を渡してよいかの判断
AIは便利な調査補助ですが、警察・公的認証機関・会社のセキュリティ担当者の代わりではありません。
まず覚えるならこれだけ

- AIの「問題なさそう」は安全証明ではない
- 会社サイトがあっても本物とは限らない
- 高評価レビューが本物とは限らない
- 実在する会社でもメールは偽物かもしれない
- 知らない相手には返信・リンク・添付を操作しない
- 確認は公式アプリや別の連絡先から行う
- AIには安全判定ではなく不審点を整理してもらう
まとめ
生成AIは、怪しいメールの不審点を整理したり、追加で確認するべきことを考えたりする時に役立ちます。
しかし、AIが会社名を検索して、
会社サイトがあります。
評価も高いため、問題なさそうです。
と回答しても、それだけで安全とは判断できません。
詐欺師が、会社サイト・会社の経歴・利用者レビュー・紹介記事までまとめて用意していた場合、AIが偽の情報を安心材料として使ってしまう可能性があります。
また、本当に存在する会社の名前が使われていても、届いたメールがその会社から送られたとは限りません。
心当たりのない送信者からメールが届いた場合は、安全を確認するまで、
- 返信しない
- リンクを押さない
- 添付ファイルを開かない
この3つを守りましょう。
……AIが「問題なさそう」と言ってくれたら、少し安心したくなる気持ちは分かります。
でも、その回答は安全証明ではありません。
最後に操作するのは自分です。少しでも不安が残る時は、メールとは別の方法で確認してくださいね。
次回予告
次の記事では、
「不審メールのリンクや添付ファイルを開いたら、実際に何が起きるのか」
を初心者向けに解説します。
「開いただけなら大丈夫?」「リンクを押したけど何も入力していない場合は?」といった疑問も整理していきます。
参考情報
- Microsoft Security Blog「Cyber Signals Issue 9:AI-powered deception」
- OpenAI Help Center「ChatGPTは真実を伝えますか?」
- Google Gemini Apps Help「Geminiアプリの回答について」
- IPA「社長等をかたる詐欺メールに注意!」
- IPA「Emotet対策」
- フィッシング対策協議会「利用者向けフィッシング詐欺対策ガイドライン 2026年度版」
- FTC「How To Evaluate Online Reviews」


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